鳥取の秋は訪れるのが早い。つい先ごろまで猛暑でまいっていたのに、九月に入ると朝晩が急に涼しく肌寒いくらいです。
そ ういえば鳥取は四季のメリハリ、食べ物の旬がはっきりしています。我が店でも秋の気配がすると、山からはクリ茸(舞茸)が入ってきます。近くの雑木林では なかなか採れないらしいですが、深山のほうでは結構出るらしく、かなりの量が出て来ます。香りよりは味を楽しむ茸で味は大変よく、吸い物や汁物にすると茸 の味がひときわ引き立ちます。
以前は、婚礼や正月、祝い事に欠くことの出来ない茸で、「香茸」というのをよく使いました。量が少なく今では ほとんど使いませんが、うれしい事に山陰の深山ではたくさん採れるようです。料理職人として、珍しい茸や素材を扱う喜びはまた格別です。松茸、シメジ、ク リ茸、ヒラ茸、ミミ茸、香茸、ナメコ、椎茸、エノキ、シシ茸、黒皮・・・ちょっと思い出すだけで十指を超えます。
また海のものは秋サバで代表されるように、背の青い魚やヒラメ、カレイがうまくなります。ノドグロは、山陰から北陸にかけてとれる白身の魚ですが、煮付けによし、焼いてもよし、都会から来た人たちには特に喜ばれます。