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| 鳥取|鳥取市の郷土料理グルメ店「花のれん」:トップ 稲葉肴ごよみ > 春 > 春の随筆 > 魚の子 |
山陰の海・近くの畑・山里・深山・湖・河で四季折々採れる食材、特別のものではなく身近な材料を使った料理で、腕の良い板前が何時間も手間隙掛けて作る料理ではなく、料理人が十年修行したら作れ、また家庭でも十分に作れそうな料理を基準に綴りました。
料理業をしていますと一日に使う魚の量はかなりのものになります。特に私の店では地元の魚を食べてもらおうと思っていますので、何種類もの魚を使います。
春は、いろいろな魚が腹に子を持つ季節。タイをはじめヒラメ、メバル、サヨリなどそれぞれ形、色、味、舌触りが違い、炊くとうまい子、塩辛にして珍味の子などいろいろ使い分けます。
タラコの塩漬け(メンタイコ)は一般の家庭でもよく食べられるでしょうが、タイの子を同じようにして食べるとタラコの何倍もうまいものです。ですが、タイやヒラメの子は粒が細かいので舌触りが良く煮るのが一番美味。土しょうがを刻んで薄味で煮込むか、肝・腸・胃袋と一緒に酒、濃口醤油、砂糖を入れて味濃く汁を煮詰めてたいてみて下さい。あちこち食べ歩いている“通”、特に男性には喜ばれるでしょう。
板前にいる私たちはそういう魚の肝や皮などのうまさを知っておられるお客様はうれしいもので、高価な料理を食べていただくより、石ダイの頭の塩焼きとか腸をヌタでくれと言われたら、自分で「これはうまい」と思っていますから、何となく気分が良いものです。
特にタイのあらは珍重します。たとえ少しでも腸や胃袋は塩漬けにして壷に入れ、一年くらいおいて「タイわたの塩辛」に。また、一匹のタイの子は量が知れていますが、寒天で流し固めて天盛りに木の芽など盛り付けると、少量の子でも五、六人分は十分にでき、お客さまにも喜ばれます。
キスは塩焼きや空揚げによく使います。茶懐石には結んで片栗をつけて形を崩さないように湯がき、吸い物の出し汁につけておきます。
板ワラビはぬるま湯で戻して下味をつけ、シイタケも小振りで肉厚のどんこシイタケをぐっすり煮込みます。
わん盛りはキスを台にし、シイタケ、板ワラビを形よく盛り付けます。出し汁をたっぷり張って木の芽をのせると、見た目も美しく仕上がります。
私が都会で働いていたころの先輩には、大きな料亭の主人や広く名を知られた店の料理長になった人たちが多くいますが、今思いますと常に料理に関して研究熱心で、魚の頭、わた一つでも大切に扱い、立派な一品に仕上げたもの。見習いのころですから、毎日魚の水洗いをしながら勉強したものです。
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